loprabbitのブログ

米国株投資その他について徒然なるままに

シグナルとノイズの区別

経済や社会情勢の動向について、ピンボケや合理性を欠く評論・予想が非常に多い。
というか、大部分がそうである。


定番の詭弁術の一つに、無数の事象の中から自己の主張に合致するノイズを集めてくるという手法がある。
100に1つしか勝たない博打でも、100万の事例から集めれば、成功事例が1万にもなる。種銭100万が5年で1億になった投資法!・・・99.99%、偶然のアウトレイヤー=ノイズです。
将来予想については、不確実性に基づく蓋然性をベースにすることが重要であり、それにプラスして、無数のノイズの中からシグナルの蓋然性があるあものを抽出することができれば、安定的に優れた手法・予測です。何かいいメルクマールが欲しい。


そんなときに、【シグナル&ノイズ 天才データアナリストの「予測学」(ネイト・シルバー)】を読んでみませんか?
シグナルとノイズの区分、シグナルの判別法等について、著名なデータアナリストが書いた書籍です。有用です。
また、【その数学が戦略を決める(イアン・エアーズ)】や【ヤバい経済学(スティーブン・レヴィット)】なんかも、楽しくデータ分析学を学べます。


まず、多種多様な前提条件をおかずに断言するコメント(日本株はゴミくずになるとか、円は暴落するとか、仮想通貨は爆騰確実とか)、ほぼ確実にネタ・アジテーションであり、予測と呼ぶに値しない。
一方、確実な分析手法、見分け方があるわけでもない。その中で、上記の書籍からは、合理的期待値を高める手法やノイズに拘泥しないための留意点をいくつも抽出することができると思います。


なお、後遺症が発生するのでご注意ください。
それは、特に政治経済関連のニュースに登場する評論家やキャスターの発言内容の多くは、データ分析学的には間違っている典型例に近く、ノイズのゴミ箱だと気付いてしまう、ということです。そのうち、政治経済問題の評論・コメントは聞かなく(新聞で十分)、専門家の書いた、(ニュース評論の100倍の厚さの)書籍を、イベントから半年~1年後に読むことになるでしょう。

国際政治、国の興亡システムを考える

投資対象を考える上で、国際政治や国の経済的発展の観点から、特に重要だと考えているのは、以下の事項です。
①中国の動向(これから10年~20年程度、主として経済成長を中心に)予測
②アメリカの対外政策
③EUの外交方針(特にドイツとフランスの関係、対ロシア、対USA)


①中国の動向について
 僕は中国の未来を(経済的発展という視点からは)楽観していません。少数エリートによる独裁制・特権階級への利益集中度合いが大きい制度・リーダー層の階級固定が強い制度のもとで発展する期間は限定的であり、そろそろタイムオーバーだと思います。そうすると、中国で利権を確保している企業、中国での強さを背景に海外で活躍する企業は、次第に強さの根拠を失うでしょう。
・ルトワックの著作(「チャイナ4.0」、「自滅する中国」)、マイケル・ピルズベリー著「2049」に影響を受けました。
・国の興亡の枠組みとしては、「国家はなぜ衰退するのか」(ダン・アセモグル&ジェイムズ・A・ロビンソン)や、「なぜ大国は衰退するのか」(グレン・ハバード&ティム・ケイン)に影響を受けました。


②アメリカの対外政策について
基本的にはプラクティカルな現実路線を採用し、各方面で勢力均衡を図り、最重要国家の地位をできるだけ長く維持する方針であると予測します。
アジアでは、北朝鮮問題が解決するまでは中国との全面対立は避け、部分的な対立&強調と止めると予想します。そのため、中国とアメリカをつなぐ役という、韓国の主な役割が軽くなります。
ロシア対策は、EU(特にドイツ)とロシアの関係を引き離す方向で画策するだろうと予想します。
中東では、イランを抑える(勢力均衡・・イラク、)、イスラエルと近隣アラブ国家の対立を抑える方向を採用すると予想します。
・「アメリカの世紀は終わらない」(ジョセフ・ナイ)、リアリスト(ミアシャイマーやウォルツ)、「米中もし戦わば」(政府関係者であるピーター・ナバロ)等の著作物や、ジョージ・フリードマンの一連の著作(100年予測、続100年予測、新100年予測、激動予測)に影響を受けました。


③EUの外交方針について
EUとロシアの軍事問題の解決策がどうなるか(NATOが関係します)、移民問題・テロ問題への対応方法がどうなるか。私見では、移民・テロ問題は大きくなると予想します。ドイツでは、移民の同化が進んでいないと思います。ウクライナ問題への対応、トルコとの関係も上手く進んでいるようには思えません。
・ジョージ・フリードマンの一連の著作、エマニュエル・トッドの著作(「問題は英国なのではないEUなのだ」「ドイツ帝国が世界を滅ぼす」「帝国以後」「移民の運命」、及び「三つの帝国の時代」(パラグ・カンナ)に影響を受けました。

移民問題を考えるための参考書オススメ

オススメの書籍はありますか?

僕は、コレです。


エマニュエル・トッド「移民の運命」


家族構成と移民に対する対応を、雑誌やテレビの評論等とは、明らかに異なるレベルで分析しています。

構造主義的な発想なので、時代変遷・文化交流に伴う変動には対応できていないかもしれませんが、過去(1980年代)までの分析としては非常に優れていると思います。


移民への対応は、基本的に「同化」か「隔離」である。「隔離」で被差別意識がなくなったり、良好な関係が進展するケース(多文化主義の成功例)は、ほぼない。


判断する非常に有効な指標は、移民女性の(非移民・同化済み男性との)外婚比率。

差別されたグループの家族構成は破壊され、母子家庭や離婚率が著しく高まっている。


また、家族構造の裏にある価値観。男女の差異、兄弟の差異、内婚の有無及び程度、直系家族可共同体家族か核家族か、識字率(特に女性)や人口構成も影響すると考えられる。


移民の歴史を具体的に検討したものとして、アメリカ(黒人差別が酷いが、イタリア人・メキシコ人・アジア人等は同化が進む)、イギリス(人種・宗教での区別は小さく、階級での区別が大きい)、フランス(共同体・内婚制の一部アラブ人以外は、外婚制のアラブ人も含め同化が進む。)、ドイツ(東欧スラブ人の同化に成功。イスラム・内婚制のトルコ人は同化せず)。